シトネゴケ目
主に配偶体(特に葉や毛葉)の形状によって多くの科(12科)に分けられている。科の区別が、わかり難いこともある。

*ここが区別のポイント

@まず、形態的特長がはっきりしている次の2科をおさえる。
 ヒゲゴケ科:植物体は髭のように細い。葉の形が特徴的である。
 イワダレゴケ科:山地や亜高山で、イワからタレるような大きな固まりになって生育する。古い茎の途中から新しい茎が出るため、植物体は階段状になることが多い。生育形や葉形、毛葉の形状が特徴的な種が多く、肉眼でも容易に種を区別できる。

@残る10科は、中肋の違いによる2グループに分けると理解し易い。
1.葉の中肋が1本で葉の中部以上に達する仲間
 A.葉身細胞は短く、方形〜ひし形
 @植物体が小さく、毛葉を欠く。葉身細胞腔上の乳頭はない、翼細胞が分化する →コゴメゴケ科
 @毛葉があり、葉身細胞に乳頭があることが多い→ウスグロゴケ科、シノブゴケ科

 B.葉身細胞は細長い線状。葉身細胞腔上の乳頭はない →ヤナギゴケ科、アオギヌゴケ科

2.葉の中肋が短く、2叉するかまたは欠く仲間
 A.翼細胞が比較的明瞭に分化する
 @規則的羽状に枝を出し、葉尖が鎌状に曲がることが多い、さくはやや曲がり内さく歯が完全なことが多い →ハイゴケ科
 @葉は平坦につくことが多く、葉尖は徐々に短くとがる。さくは直立する →ツヤゴケ科
 @葉の基部(茎との接着部)に大型の細胞が並ぶことが多い、葉身細胞腔上に乳頭をもつことが多い →ナガハシゴケ科

 B.翼細胞の分化は弱い
 @葉の両縁基部の細胞は、薄膜透明で、茎上を下延する、茎の表皮細胞が薄膜で大型 →サナダゴケ科
 @葉身細胞の隔壁は厚く肥厚する →ナワゴケ科
シトネゴケ目の科 (属と種の数) 生育地 主な特徴
1 ヒゲゴケ科    (2属4種) 各地の樹幹基部や腐木上に薄いマットをなす、湿った石灰岩に稀に生育するものもある 植物体は微小で、細い糸状。葉身細胞は1個の乳頭を持つことが多い
2 コゴメゴケ科   (5属10種) 各地の樹幹上でマット状に生育することが多い 植物体は微小〜小型で、胞子体も小さく、高さが1センチ以内
3 ウスグロゴケ科 (12属23種) 各地の樹幹から垂れ下がったり、岩上でマット状になる。暗緑色の群落になることが多い 葉身細胞が短く長六角形〜長菱形で、腔上の乳頭または上端突起を持つことが多い。
4 シノブゴケ科  (15属53種) 各地の土、岩、腐植土、腐木の上や樹幹基部に黄褐色でくすんだ厚いマットをなすことが多い 規則的または不規則羽状に枝を出し、角状の毛葉を持つものが多い。葉身細胞は短く顕著な乳頭を持つことが多い
5 ヤナギゴケ科  (13属39種) 各地の湿地や水辺など湿潤な所の土上や岩上 湿地に生育するものは茎が立ち上がる。ほとんどの種が葉身細胞は細長い線状で乳頭をもたない
6 アオギヌゴケ科  (10属63種) 各地の岩上、腐植土、樹幹基部など。湿潤な所から乾燥した所までさまざまな環境に生育する 茎がはいマット状に生育することが多いが、茎が立ち上がるものもある。腔上に乳頭をもつものはなく、絹様の光沢があるものが多い
7 ツヤゴケ科    (2属15種) 各地で、樹幹や木の根元、岩上 茎がはい、つやのあるマットを作って生育することが多い。さくが直立し、卵状〜円筒状。外さく歯が細く、内さく歯の発達が悪いことが多い
8 サナダゴケ科  (2属10種) 各地の岩上、腐植土、樹幹基部などに平坦なマットを作って生育。 さくは細長い円筒状で、やや曲がる。枝はでないことが多く、平坦に葉をつけることが多い
9 ナワゴケ科     (2属5種)   中部以西の太平洋岸沿いの暖地で乾燥しやすい岩上や樹幹基部に生育【やや稀】 丸く葉をつけた二次茎が斜上し、黄褐色の密なマットを作ることが多い。外さく歯が特異な肥厚をする仲間で、葉の細胞壁も厚く肥厚する
10 ナガハシゴケ科 (15属28種) 暖地の枝上に小さな固まりになって生育するものが多いが、巣埴土や腐木、樹幹基部、岩上でマット状に生育するものもある つやのある、またはくすんだ黄褐色の群落を作ることが多い。葉基部には顕著に膨らんだ細胞が並ぶ
11 ハイゴケ科    (21属79種) 各地で、種によってさまざまな基物上に、平坦なあるいは厚いマットを作って生育 規則的羽状に枝を広げ、葉尖が鎌状に曲がり、葉縁基部の翼細胞が顕著になることが多い
12 イワダレゴケ科 (8属12種) 山地から高山にかけて、岩上や腐植土、腐木上などに厚いマットの大群落を作ることが多い 大型の種が多い。新しい茎は古い茎の途中よりでて上方に伸びる。つの状の毛葉をつけるものがある